8.<99基準発動>1999年(H11)
ルパンも設置から3カ月。あまり出なくなってきた感のある1999年(H11)1月。
ある日、友人Sから夕方連絡が来た。
「Nさん、確変リミッタが無くなりますよ。で、ちょっと話したいことがあるんですが・・・」
「え? じゃ、30分後にドトールへいきます」
「了解です」
さっさと仕事をかたずけてドトールへ向かう。
店の奥でP雑誌を読んでいる友人Sが目に入った。アメリカンを受け取って奥へ向かう。
「なにか面白そうな話ですか?」
「面白いというか・・・P台のリミッタが無くなって4月に新台がでます、ほら」
差しだしたP雑誌には大きく“リミッター解除”の文字が。続いて“第一号、CRフィーバーゼウス登場”の文字。
読んでみると次のような内容だった。
内規改正により1999年(H11)に確変リミッター(5回)が実質的に解除
最低確率が360から320 or 360に。また出玉の緩和。
これを99基準と呼び、その第一号機が三共のフィーバーゼウス(SX)
次がその仕様だ。
1999年4月発売
CRフィーバーゼウスSX
出玉数約2200個
大当確率
1/315 →1/63
確変割合1/2(50%)
確変による連続大当たりは222回まで
率直な感想、222回も確変が続くわけがないし・・・アホらし
まぁ、5回以上の連チャンの可能性が復活したというだけである。
「Sさん、喜んでますけど、サクサク当たりが出るとはどこにも書いてないですよ」
「またそういうことを・・・確率315.5ですから当然です」
「自分は確率300以上の台は勝てる気がしないんですよ」
確率315.5では1000回ハマリは日常的に発生する。
「こんな台に金をつぎ込んだら地獄行きですよ・・・」
と言いながらも、やむなくチャレンジしてみたが、3回行って1回もプラスにならなかった。
1000円28回以上回る台でありながら、朝から挑戦しても連チャンは3回が限度で、思った以上にハマりが深い。
出玉は投入した金額に追いつけば良い方で、それ以下となった。
この台は相性が悪い、自分の中では完全に終わった。やはり現金機である。
一方、この台は発売後しばらくして、体感機による攻略法が発覚し、P雑誌にその詳細が掲載された。続いてウェスタンヒーローもその餌食に。
結果、それらの台はまったく回らないあからさまな回収台と化し、あえなく撤去されたのは言うまでもない。
だが、その後数年の間、現金機を中心に立ちまわり店内を観察する内に、CR機にある異変が起きていることに気付いた。
それまでのCR機の1日の当たりは、リミッタのせいもあり、多くても25〜30回程度だったのだが、規制解除後は、怪獣ものの新台の当たりが40回、50回を超えていたのだ。もちろんその逆の1500、2000回のハマりも普通に出現していた。このとき初めて恐怖を感じた。
これは・・・Pのやめ時がきたのかもしれない・・・いよいよ軍資金5万、10万の時代が来る、現金機が消えたら終わりにしよう。これまで飲み代に困ることもなく、結構10000円相当の家電品にも交換させてもらった。
本業に専念すべし。私は密かに思った。
ミニコラム:リミッタ解除後のP業界の低迷
それは以下の通り惨憺たるものだった。
1999年、遊戯人口3000万人から1860万人と最低記録を更新、P店倒産件数に歯止めがかか
らず。また1人当たりの年平均費用が83,400円と最低に。
2001年、P店倒産件数105件、負債総額156,032百万円(1500億円越え)と突出2006〜2007
年、市場規模の縮小幅は44,750億円(4兆円越え)とマイナスの傾きが最大に。
2007年、P店倒産件数144件、負債総額203,927百万円(2000億円越え)と最大となる。
(2000〜2010の間)
(以上は、PTB資料、Ver24による)
まさにこれは一連の負のスパイラルである。
この結果、市場規模は30兆円から23兆円規模に縮小した。一方で規制緩和の影響もあり、P業界は大手チェーンに有利なグループ経営へと転換し、店舗の営業形態も変化していった。この中で店舗やメーカーの売り上げは大きく変化することは無かった。なぜだろうか?
1999年は空前のパチスロブームの始まりであったのだ。メーカーがスロットの新台を発表すれば、店舗は先を争ってそれを導入。一方P台の出玉は抑え気味になったものの、後には大当確率の分母は500まで緩和された。連チャン率の壁も取り払われたため、大爆発の可能性があった。旧来の常連客は恐怖を感じて(?)去って行ったが、代わりに1台当たりにタイマイをつぎ込むヘビーユーザーが増殖した。
こうした理由から、P業界はさほど致命的なキズを負うことが無かった。規模は縮小してもヘビーユーザーがいて、スロットがあればいいという安易な体制で突き進んだ結果、2015年からの大幅規制につながるのだが・・・
私の恐怖は本物となった。地獄の修羅場がはじまったのだ。
9.<攻略という幻想>2000年(H12)
ミレニアムといって騒がれたが、これといった珍しいことも起きること無く新年を迎えた。
それからしばらくして、コンビニに立ち寄りP雑誌を見ると、表紙にフィーバーゼウスの記事が目に入った。今更フィーバーゼウスもないだろう、まもなく1年になる。手にとって記事を見るとそうではなかった。
確かにそこにはフィーバーゼウスSXのカウンタ周期、大当値が記載されていた。
カウンタクロック 2ms、
カウント値 0〜630(315.5×2=631)
大当値 7,373
カウンタ周期 631×2ms=1262ms=1.262秒
早速雑誌を買って喫茶店に寄る。現存するP台はすべてプラス1方式(*1)であるから、それら2つがわかれば、確かに体感器攻略の対象となる。
しかし、この台はこの4月で発売から1年を迎える。P店に設置してあったとしても台数も1、2台と少ないし、釘が渋く回らない。既に撤去した店がほとんどだろう。今この情報をリークしても何の問題もないと踏んだものか、元関係者が小銭ほしさにリークしたものやら経緯は不明だが、旬の台ではないことだけは確かだ。
それに、今日以降、これまでほとんど誰も座らなかった台に陣取って、怪しげな打ち方をする者がいたなら、すぐに目を付けられるだろう。P店のカメラは遊戯中の客の手の毛穴まで拡大して見ることができるというから、それは容易にバレルかもしれない。
そんなリスクを負うより、新台を打ったほうがいいのではないだろうか?
きっと友人Sから何か言ってくるだろうと思っていたら、案の定きた。
「P雑誌見ましたか? 私の体感器、使えますかね?」
「ま、使えなくもないと思いますが・・・購入元から新情報は来ないんですか?」
「来たんですよ、それが・・・。ちょっと聞きたいこともあるのでこれから時間いいですか?」
「もう19:00ですね。ドトールで待ってますよ」
「OKです。」
P台の周期に合わせるためには、体感器の基本クロックとその分周値が問題となる。これが合わなければ、無理やり近い値にしたところで、時間の経過とともに周期ズレが発生し、何の役にも立たなくなる。
1.262sを基本にして体感器の周期とビート数を決めればよいのだが・・・
実は友人Sの体感器はその攻略に使える。だが、それをいきなり“実機で実践してはならない”ということだ。いくら金を使ってもいい、というのなら良いが、それは普通ありえない。しかも今では釘がどうにもならない。体感器使用の前提は、実機を購入して十分練習を積むことにある。無理だろうなぁ、と思いながらドトールヘ向かった。
「どうもどうも。これ見たでしょう!」
P雑誌を手に目がギラギラしている。まさか・・・取らぬタヌキの皮算用か・・・
「もちろん見ましたけど・・・」
以下、体感器の説明をした。
まず第一に、知っての通り自力で確変を引かねばならない。しかも、そのタイミングを外したら何の意味もない。
では、運よくタイミングを合わせたとする。
次が大変である。玉を2、3個打ちだす。大当たりのビートに合わせて電チューに玉をいれねばならない。
普通の人にとって、これは至難の業である。打ちだしたタイミングから電チュウに入るまでの平均時間を計算した上でビートに合わせるのだ。
体感器プロは実機を購入、日々練習するのである。複数人でお金を出し会えばリスクも減る。
それに今更実機を買っても、今後その台の撤去速度が間違いなく速まるし、残っていたとしても釘が・・・
そんな話をしていたら、友人Sは残念そうに言った。
「やはりだめですか・・・20万円はゴミ箱に捨てたも同然ですねぇ・・・」
「もう体感器のことは忘れましょう。いい経験をしたと思えばいいじゃないですか・・・」
「・・・」
「体感器に関わる限り、危険が付きまといますよ。だから、さあ、気分なおしに飲みにいきましょうよ!」
「そうですねぇ・・・そうしましょう!」
友人Sの落胆振りは目に余るものがあった。が、実機でそれを使用した結果、新聞にその名前が載るよりはましである。その悪夢を打ち消すように、われわれはネオンの巷へと繰り出していくのであった。
ミニコラム:体感器は犯罪か?
かつては、体感器の使用は犯罪行為とはみなされていなかった。とはいえ、Pホールがそれを放置しておくわけがなく、止め打ち、変則打ち、体感器使用は禁止されていた。
あまり当てにならない攻略法だったが、例えばマジカルチェイサーの大当たり中にどこかのラウンドで最後の1個を入れずにアタッカーを開放したままにしていると、いつの間にか店員が後ろに来て、声をかけてくる、などということは実際よくあった。一種の変則打ちだが・・・しかしなぜ分かったのだろうか?
確かにドル箱を積んでいるから目立つ。そこへ来て、大当たりしているにもかかわらず、客がハンドルから手を離してアタッカーを睨んでいるところを、天井の高性能カメラで見たなら、それは奇妙に思うだろう。まぁ、この程度では注意も連行もされることは無いが、体感器が見つかった場合、事務所に連行され・・・怖い目に会った後、出入禁止ということに。
だが、法的処置があいまいだった体感器も、スロットでの不正が発覚した事例で決定した。2005年(H17)の北海道、札幌の事件である。コイン3000枚の不正取得。2007年(H19)に窃盗罪として判決が下ったのである。
体感器使用、持ち込みはもはや犯罪なのである。
2003年.99基準で規制が緩和されてから4年経った。
私はCR機の大当たりの回数から嫌な予感を覚えたが故に、Pからは離れていた。
この間、なんとCR機の確率は上がってしまった。2003年の時点で分母が350である。
これだと旧基準機の確率とそう変わらない。
2回ループでは無いので仕様は異なる。だが、出玉を約1800個に抑えてあっても、確変(1/2)に突入した後、偏れば大爆発となる。当然客はそれを目指して店に押し寄せる。98年頃のような1〜3万円の予算では当りは期待できない。ヘビーユーザーの独壇場、もしくは借り入れでそれとなる者が増えるに違いない。規制の意味はどこへ行ったのだろうか? 恐ろしいことになっている。
12月。仕事の打ち合わせがおわり、駅まで歩いて行く途中、ばかにノボリが立って賑やかな所に来た。そこには今まで気がつかなかったP店があった。A店とでもしておこう。
ふらっと入ってみたところ、あるシマの半分にズラッと羽モノの新台が並んでいた。だが、客がいない。
新台の羽根モノは釘が甘い・・・はず。1台ずつ見て歩いたところ大きな違いが見えなかった。
とりあえず、カド台で試してみる。
500円からスタート。1チャッカーに7回、2チャッカーに2回も入り、回転体に良く玉が向かう。次の500円でうまく回転体のVに玉が入った。
ラウンド判定が15と出た! デキた。
この台は調整が良いせいか、ナキが平均しており、ラウンド振り分けにも恵まれ16Rが連続する。ハマりが全く気にならない。2時間の間に最大5箱まで行ったのだが、4箱満杯で終了とした。投資1000円、2.5円換算で2万円を獲得した。
どうやら運が向いてきたようだ。
翌日10時5分前に昨日のA店に行ったところ、既に客が10人ほど並んでいた。
10:00と同時に客がなだれ込んだが、全てギンパラ(権利物/設定223,241,257/出玉2400個)のシマに向かっていった。当然、新台の羽根モノには目もくれない。
これは余裕でいただきだ。
同じカド台を確保し500円玉6枚に両替する。1枚目スタート。今日もナキ、ヒロイともに好調である。4枚投入したところで回転体のVに突入。快調に当たりを続け、4.5箱で終了。投資2000円、2.5円換算で2.4万円を獲得した。
今日、打っている間にVに入るタイミングが分かってきた。
土日以外2週間通ってみたところ、台の調整は行われていなかった。投資金は3000円以上いくことはなく、毎回1〜2万円を獲得した。
3週目、10:30にA店に入る。誰もいないはずの羽モノのシマのいつものカド台にオバハンが陣取っているではないか。やはりこの2週間のどこかで見られていたようだ。やむなく他の台に座る。500円で1箱出たが、呑まれてしまった。ヒロイはあるので、タイミングを合わせて打ちだすのだが、ラウンド振り分けが1,7ばかりに偏り、ハマりをクリアできない。16が続かないと厳しいのだ。1時間経過して、オバハンのカド台を見ると2箱になっていた。タイミングを無視して打ってもそこそこ出る台なのだ。自分の台は投資が5000円に到達したので中止とした。
やはりデキの良い台と悪い台があるようだ。だが、新台とは言え導入から2週間もすれば釘調整などが行われるはずである。これからは今までのようにはいかないかもしれない。
その台こそ、2003年発売の“キングスターGP”(三共)であった。
羽根モノは釘読みの妙味と台のデキ、そして(狙えるものは)タイミング狙いで勝敗が分かれる。体感器やタタキやゴトとは無縁に楽しめるものである。ガンバレさぶちゃんやシンチャンにおまかせ、TOKIOといった羽モノは、自力完走の可能性はゼロ、全くのデジタル抽選まかせである。解放タイミングを狙って打ち込んでも3Rのような低ラウンドが連続したのでは、次のハマりを凌ぐことは不可能であり、微妙に速度が変化する回転体のために、ほぼ連続で10回以上玉を拾わせてもVの位置が完全にずれてしまっており、あっと言う間にナキは50回を超え、ひたすらハマルだけとなってしまう。これでは自力で勝てる可能性は激減してしまう。技術介入を極力避けた仕様にはほどほど参った。結局デジタルの偏りに期待するしかない運任せの台なのである。メーカーはかつて羽根モノのシマがいつも満員であったことを忘れてしまったのだろうか?
かつてのキングスターやファインプレーのような技術介入ができる楽しい台を再び開発してもらいたいものだ。
ミニコラム:羽モノ キングスターGP(三共)
デジタル抽選1,7,15Rでありながら、1,7のラウンドでも自力で15Rに到達可能な夢のある羽根モノだった。回転体のVの位置を見極めて玉を拾わせれば、ほぼ確実にV入賞できた。
また、大当たり中の音楽が美しかった。
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