10.<P韓国へ渡る?−学ぶべきことはあるのか・・・>
<メダルチギの真偽>
2000年。Pは韓国に渡り大ブームとなった、という。
いくつかのP関連本やガセHPでは、それらは日本の中古P台からチャッカーや釘を外し、液晶部分とメダル投入口のみに改造したものであると書いている。
だが、そこには実際にそれを見たとはどこにも書いてないし、実物の写真もない。あるのは一部のHPのみである。まぁ、和製Wikipediaとまた聴きのまた聴きのまた聴き。ネット住人の最悪の常識である。
ガセネタは無視するとして、今日外国人向け(16か所)及び韓国人向け(江原一か所)カジノがある韓国で一体何が起こっていたのだろうか?
当時、韓国、中国へ観光旅行に行った友人から聞いた話と参考資料をもとに以下考えてみたい。
韓国では成人娯楽室という名のゲームセンターが大量に開店していたという。これは日本式のパチンコ、スロット店ではない。大人の遊戯場だ。このゲーセンに置かれていたのが札を投入するだけで何の操作もいらないゲーム、メダルチギ(チギ=機械)である。メダルという名が付いているが、日本のPS(以下、パチスロの略)とは異なり、メダルも使用しない。
そしてそのメダルチギの代表がパダイヤギ=海物語である。ちなみに、韓国ではPやパダイヤギの話を市民にすると、“あれは低所得層が行うバクチ“とはっきり意識されており、そんな話はしないでくれ、と言わんばかりであったという。
いくつかのHPでそれらが写真付きで紹介されている。画面が上下に2つあるもの、ドラムタイプなど複数の種類がある。1万ウォン(約1000円)札を投入するとゲームが自動的に始まり、操作するところが無いので後は見ているだけである。お金がある限り、画面の中でストックコイン(CGのメダル)が落ち続ける。当たりを重ねて点数がMAXになると商品券が出て、点数がクリアされる。この商品券は換金できる。
ただし、海物語と言っても、日本のP台とはまったく画面表示が異なる。泡が出たりするが、マリンちゃんもサンゴの山も出てこない。一部に、パクリの部分もあるだろうが、このゲームを見る限り、その内容により大ヒットしたわけではないことがわかる。明らかに、金を投入して、楽をして(技術介入など全くなしに)稼ぐという手合いのモノだ。いわばカジノに近い。無論いくら金を投入しても当たりが無く点数が上がらないという逆のパターンも大いにあり得る。
これだけでも、日本のP台が海を渡ったいうのは無理があるのではないか?
そこで日本のPが韓国に渡ったという誤解について2つの点から説明してみよう。
1つは、文化的な面である。2つは、日本独自の確率換金ゲームシステムへの着目である。
<第一:文化的な面での誤解>
日本に最も近い韓国ではあるが、故・金大中大統領(1998〜2003)が登場するまで“日本語表示”や“日本の歌や音楽”といった日本文化は禁止されていたことを忘れてはならない。
20世紀において日本が直接・間接に関わった戦争は日中戦争、第二次大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争である。
井上清教授が「日本の歴史(上中下:岩波新書)」で語っているように、日本は“狂気の25年戦争”の後自滅、1945年9月2日ポツダム宣言を受諾してようやく無条件降伏した。8/15は終戦の日ではない。天皇が国内の兵士、臣民に向けてポツダム宣言を受け入れるから銃器を放棄せよと宣言したに過ぎない。
正しく制定すべきは、“9/2 敗戦・侵略戦争懺悔の日“である。
<日本帝国主義と経済帝国主義の罪悪>
かつて日本は中国、朝鮮半島を侵略。泥沼化した日中戦争を打開すべく南下政策を推し進めたが、これへの処置として欧米諸国はABCD包囲網により経済封鎖を実施。1939年には日米通商航海条約の廃棄をアメリカに通告された。翌1940年、それは実際に廃棄された。
かくして経済封鎖により日本国内には物資、燃料が入ってこなくなった。これを打開するために日本は東南アジアにも侵略の手を伸ばしたが、部隊の立て直しのために一旦退却した連合軍はその帰途に油田をすべて破壊していった。そのため燃料確保の目論見は消え去った。
この兵站を無視した侵略戦争中に日本軍の行った略奪、残虐行為は“燼滅(じんめつ:滅ぼすこと)掃討作戦”と称され、これを恐れた中国人が三光作戦(三光とは、奪い尽くす、焼き尽くす、殺し尽くすの意)と呼んだことは既に明らかになっている。その上、1981年(S56)には、森村誠一氏の“悪魔の飽食“により、中国で細菌、毒ガスによる人体実験を大量に繰り返した731部隊が暴かれた。
私の30年来の知り合いに台湾人の女性がいる。間もなく80歳。日本人と結婚し、当の昔に試験を受けて永住権を獲得している。大変明るく、商売もうまい人だ。だが、今は病の身だ。以前、一度だけ偶然だったのだが、戦争中の台湾はどうだったのかという話になったとき、彼女に当時の苦渋の思いが蘇ったのだろう、涙ながらに当時の様子を話してくれた。それを書くことはできないが、今では親日国の台湾でも日本軍の残虐行為、略奪行為が行われたことを忘れてはならないのだ。
その上、多くの日本人が既に忘れ去った1945年日本軍占領下のベトナム人200万人餓死事件がある。
1982年「日本軍国主義のベトナム人民に対する大罪」がベトナム共産党機関紙に掲載された。日本国内の教科書検定問題に際してのものだ。その内容は、農民に強制して稲田をつぶして麻を植えさせ、米を全て農民から収奪した上に、1944末〜1945始めの天候不順が重なり、畏怖すべき大飢饉が発生、200万人の民衆が悲惨な状態で餓死した。1940年から5年間の占領期間中、ファシスト日本は実に野蛮な民族絶滅という悪行を犯した。
このたびの検定はこの事件・事実を隠蔽するものである、というものである。この詳細は、伊藤千尋氏著「観光コースでないベトナム 歴史・戦争・民族を知る旅」に現地インタビューを踏まえた記載がある。
この大戦中に日本陸軍が朝鮮半島、中国、東南アジアで行った非道行為、収奪行為は許されるものではない。だが、戦後アメリカの傘下に組み入れられた日本は、アジアにおけるアメリカの戦争による特需景気で復興の足掛かりを得る。まず、朝鮮半島で朝鮮戦争が勃発、日本は朝鮮特需により経済復興の足掛かりを得る。さらにその後、ベトナム戦争が勃発、日本はまたもやベトナム特需の恩恵を得る。かくも間接的に戦争に加担することで、2度に渡りかつて侵略した国を蹂躙し、自国の利益を貪ったのだ。2重の戦争犯罪と言われても文句は言えまい。
確かに戦後、南に無償援助3900万ドル、北に3900万ドル(1975)という形で戦争の賠償をした。今ではODAも含めて、企業の進出も盛んだ。アジアで作られた衣類等の商品が国内で低価格で販売されている。だがその裏には、日本企業により低労働賃金で搾取される人々がいることを忘れてはならない。新しい戦争=経済戦争が続いているのである。
こうして国外で陰に陽にさんざん悪行を為してきた日本であるわけだが、国内でも憲兵、特高警察による略奪、残虐行為が日本国民に対しておこなわれたことも忘れてはならない。戦争に反対した京大の哲学者・三木清が48歳で獄中死したこと、多くの共産・社会主義者、無政府主義者、少なからぬ婦女子が鬼畜の手で貶められ、命を落としたこと、密告の強要、残虐な拷問等の数多くの非道な行為を多くの国民が受けたことを忘れてしまっているのではないだろうか? 憲兵、特高警察に志願した者の多くは他者に苦痛を与えることで快楽を得るサディスト=変質者であり、性格異常者であった。こやつらが権力の手先となり、野放しにされていたのだ。
戦争中の憎むべき憲兵、特高警察の責任を問わない日本人はどうかしているとしか言いようがない。これこそ日本人特有の責任の所在を曖昧にしたまま放置するという体質を表しているといえるだろう。ヨーロッパでは、今もナチス残党とその協力者を捜索し、たとえ齢90を過ぎ、病を得た老人であっても容赦なく追及し、断罪していることを見習うべきである。
アジア(インドを含む)に住む少なからぬ人々の反日感情は21世紀の今日でも各地で残存している。特に朝鮮半島、中国ではもはや永久に消えないのではないかとも思われるほどの“怨念”となって人々を駆り立てているように見える。
いつまでもいい加減な立場をとる限り、周辺国の疑念から逃れる事はできない。
<韓国の文化開放政策>
さて、こうした約50年に渡る日本の植民地支配から脱却した韓国は、1948年李承晩大統領以降、「反日・反共」のスローガンの下に文化政策を推し進めた。途中、大学に日本語学科が開設されたこともあったが、それは前述のように金大中大統領まで続く。同大統領は「文化産業振興5カ年計画」(1999年)を打ち出し、文化的鎖国を打ち破ろうとした。
1998年の韓国世論調査によると反対者は国民の63%もあったが、1999年には反対者が20%に、2000年には15%弱にまで減った。そしてそれは2004年の第四次解放までつづく。その後、首相の靖国参拝や竹島問題、従軍慰安婦問題により両国の関係は一気に冷え込み、日本への親近感(良い印象)は2017年で26%程度となってしまったのは周知のとおりである。残念ながら相互理解100%には程遠いのである。
まぁ、こうした歴史的な経緯があって日本大衆文化を段階的に受け入れてきた韓国ではあるが、その主たるものは書籍、アニメ、ドラマ、芸能が中心である。国の関係が冷え込んでも、大衆文化の交流は絶えることなく“アツイ”のである。したがって、韓国における文化面の変化を考えると、2000年頃には日本の文化を受け入れる態勢は既にできていたといえる。
だが、産業面では異なる。かつて日本の得意とした家電品、半導体製造業界の勢力図は既に大きく変わり、2015年には韓国企業がトップを占めている。これは一朝一夕にできるものではない。国の政策の下に60年代から半世紀に渡り発展させてきた努力の結果である。
<日本技術大国の欺瞞>
2000年代、日本の主要電気メーカーは電子機器に加え、半導体製造装置を盛んに韓国に輸出していた。筆者は当時T社製半導体製造装置(UNIXベース)の開発・設計にも携わっていたが、当時の営業の話によれば、これが最後の大口の顧客となるだろうといっていた。当時、日本にとって韓国は良いお客の一つに過ぎなかったが、誰一人として半導体事業で逆転が起こるとは想像だにできなかった。
韓国はこうして着実に技術力を蓄えていったのである。その結果、世界に誇る半導体事業を確立した。こうした事実を日本のメディアはなかなか認めたがらない。日本製品はすばらしい技術で作られており、世界に誇れる、これからも十分可能だ、と何の根拠もなく繰り返し、盛んに宣伝している。ネット上にも事実を無視、もしくは曲解し、韓国、中国への誹謗中傷を書いた愚かなHPが数多く存在する。
これらは科学への無知や現場を知らないこと、さらに井の中のカワズである日本の技術者の慢心にも起因する大きな勘違いだ。
家の中にある電化製品を見るとわかるのだが、日本人が独自に考えたものはほとんどない。
ラジオ、フラットテレビ、DVD/HDDレコーダ、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、扇風機、蛍光灯、ファンヒータ、パソコン、HDD、スキャナ、プリンタ、ルーター、光機器、ガス機器、自動車・・・古いところでは、ブラウン管テレビ、カセットデッキ、ビデオテープとそのレコーダetc.
(電気釜、こたつは日本文化独自のものであるが、ベースとなる外国の発明と技術、製品が入ってきて初めて製造できたのである。)
ほぼすべて海外で発明、製品化されたのもばかりだ。日本人がやったことは、小型化したり、マイコン制御という過剰な機能による付加価値を付けて売り物にしているにすぎない。
それに世界が注目し、取り入れたのは個々の製品では無く、その効率的な生産方式であったことも忘れてはならない。
最近のシロモノ家電業界の不振は、今に始まったことではない。今や屋内、トイレ、風呂、台所の電化はすみずみまで行き渡り、海外から改良可能な新製品もなかなか出て来なくなった。ダイソンの羽根なし扇風機は特許のために手も足もでないし、洗練されていて改良(パクリ)の余地が無い。特許の有効期限切れを待つのみである。
(2015年頃だったと思うが、新聞広告に中国製完全コピー品が9800円で大々的に売り出された。だが、1カ月しない内に販売中止に追い込まれた。当然であるが、新聞社は金になる広告なら何でも掲載するのか? 日頃偉そうなことを論説で述べているが、その常識を大いに疑う。)
ところが、ダイソンのサイクロン掃除機は発売されるとすぐに日本のメーカーが飛び付き、改良版特許を取得、似たようなものを販売し始めた。完全なパクリである。中国や韓国がどうのこうのとは言えない。とにかく基本が海外(欧米)からの新製品待ちなのである。
話を元に戻そう。
日本のP台を参考にしたとしても、新たなマシンを作るのである。当然そこには韓国の技術者、製造業者らが関わる。誰からの強制も法的な規制も受けないのであるから、自信を持ってすべてを韓国仕様にしたのは当然の成り行きである。よって日本語が書かれ、しかも大音量で日本語の音声が飛び出す機械がそのまま使用されるはずがない。十分な技術と資金量をもってすれば、作り直すことは容易だ。
<第二:日本独自の確率換金ゲームシステムへの着目>
韓国では1990年代末頃から外国人向けカジノが作られた。国民向けは2003年頃に1件だけ作られた。こうしてギャンブルへ国民の関心が大きく傾いた結果、カジノがない日本のP業界の売り上げが30兆円もあるときけば、このシステムで儲けを狙う人々が出て来ないはずがないだろう。
日本のPの仕組みは次のような流れである。
現金で玉を貸りる→ゲームで当り→玉が払いだされる→景品交換→換金(または貯玉)
というカジノとは異なる日本独自の玉貸し確率ゲームによる換金システムである。彼らの興味はここにあり、遊技方法や法規制には関心がない。
これを、
台に現金投資→ゲームで当り→ポイント獲得(ポイントMAX)→商品券→換金
という流れに変更。
まず、玉を無くす。これで玉を買わずに直接入金すればよい。ゲーセンのポーカーゲーム機と同じだ。すると釘、ハンドル等のP台を構成する部品も全く不要となる。これで回転ムラにムカついたり、人によって出玉が違うといった不公平感が無くなり、機械的な騒音も一切無くなる。換金については景品=商品券(紙)を発行して現金と交換した後廃棄する。新たな換金システムの出来上がりである。
中身については、画面に入金額に応じたストックを表示して、それが画面上で消費されるようにプログラムを作成。その度に抽選が行われるようにし、その確率も韓国仕様に。大当りでポイントを稼ぎ、MAXでファンファーレと共に商品券を払いだし、ポイントクリア。
これらの一連の動作を繰り返せばよい。こうなるとパクリでは無い。新たなゲームである。
以上から、メダルチギは2000年に急に拡大したのではなく、その数年前から次第に広がっていったということであるから、プログラムも、盤面も、遊技方法も変更されていたのは必然と言える。明らかに日本のPが韓国に渡ったのではない。
韓国内で独自に発展したメダルチギについては、小店舗が最大で16000店も存在し、いくつものメーカーが乱立したという。1回の大当たりの限度額が2万ウォン(約2000円)と規定されていたにも関わらず、他人よりも大きな利益を得ようと考える者が、違法な改造マシンを作り出すのは世の常である。結果、最大払い出し量が当初の200倍から2万倍以上に改造したギャンブルマシンが出てきてしまった。“4号機もびっくり”の驚愕のギャンブルマシンである。しかも24時間営業もあったという。大陸のお方々はやることが実に極端だ。
かくして、数兆円の経済効果の一方で、遊興費捻出のための借金苦や死人が出たり(24時間営業に起因する)、犯罪、汚職(*1)が摘発されるに至り、国会で大問題になった。最終的には立法府にて2006年法律を制定、P台は韓国全土で禁止され、全て撤去・排除されるに至った。(一部、裏営業が残ったが徹底的に摘発された。)
このように韓国内ではわずか6年程の間に違法ギャンブルが蔓延、大統領への疑念(後、捜査打ち切り)も重なり、国民的規模の怒りや不満が広がって以上の顛末となった。ここには日本人には知りえない、軍政に苦悩しながらも大統領制を保持してきた高い市民意識が潜んでいるように思える。
<日本人の無思想性>
日本ではPがらみの大きな事件は、韓国の極端な事例に比べると、めったに起きていない。大掛かりな裏組織が行うゴトはめったに表に出る(新聞沙汰)ことはなく、P台が社会問題化する瀬戸際で内規改正または風適法改正で生じた問題に対応、排除してきた。それに基本的に違法な機械など出回らないような仕組み(検定制度)にもなっている。検定条件は厳しく、P台やPS台は過去大量に不合格とされてきた。
だが、過去には表沙汰になった大きな事件があった。1994年(H6)9月の“オオタ事件”である。200枚を超えるPS不正基板(裏ROMモノ)が押収され、全国にあった30店舗が営業許可取り消し処分を受け、このために株式上場計画は霧散した。
ところが、1年を経ずして、同じ店舗が全国で次々と名称を変えて復活していった。ダミー会社を利用した巧妙な手口が使われたのである。そこには警察OB、国会議員、県議を巻き込んだ汚職と贈賄の渦がどろどろと巻いていたという。
これは坂口 義弘著 “パチンコ産業30兆円の闇―政財官癒着の全構図
怒れ!3000万ファン”(絶版、場所によるが図書館に有)に詳しい。
だが、これでさえもはや記憶している国民はP関係者を除けばほとんどいないだろう。警察主導で事件は一件落着。いつの間にか記憶の彼方へ去ってしまった。
どうやら日本人は人、特に身内の生死に無関係であるかぎり、“悪事”は警察主導で解決さえすればほとんど意に留めないようだ。加えて前述のように、日本人は、例え公的、私的責任の所在をうやむやにされても、これも意に留めない民族である。よってそこには総括も結論も反省もない。
そのよい例が60年、70年安保闘争だろう。学生、労働者が中心となり日米安全保障条約改正に反対したが、市民、学生のデモ隊に死者まで出た。当時、日本経済は高度成長期にあり、アメリカの核の傘下で、国家予算を軍事費に費やすことなく経済の自由を世界に向けて謳歌していた。各国の事情を考慮することなく、ひたすら海外への輸出攻勢に出た結果、日本人は顔の見えないエコノミック・アニマル(欲の皮の突っ張った黄色いオサル)と先進国から蔑まれたのである。
しかし、初めて市民レベルにまで浸透したと思われたこの闘争は、80年代にはウソのように消え去り、平和な日常が戻る。安保条約はそのまま改正・保持され、暴力闘争に特化した革命集団は日本での革命は不可能と判断、赤軍派のように海外の反体制、反権力(主にアメリカに対する)組織にその身を投じて行った。
その間、自衛隊の国防費は徐々に増大、マスコミが煽った根拠のない偽の中流階級意識が国民の間に蔓延した。そしてバブル景気に浮かれた挙句の果て、バブルが崩壊、日本経済は低迷、長いトンネルに入ったままとなる。
結局、市民レベルで過去の問題の総括が行われたことは一度もなく、指導していた社会党は消滅、共産党も細々と党勢を保つのがやっとという状態だ。指導した政党としての責任もうやむやにしたままで、総括を行い国民にその信を問うた形跡はどこにもないし、国民も求めない。
これこそが世界でも稀有な、日本人の“無思想型“民主主義である。
“無思想型“民主主義は、支配層も被支配層も責任をうやむやにし、且つそれを避ける傾向があることを特徴とする。
さらに、責任を逃れた罪悪感は、経済的な向上=金儲けと浪費により解消される。天変地異が生じた場合には相互扶助意識が働くが、日常生活ではその意識はもはや作用しない。かつての美徳は失われ、基本的に他人は無関係である。
というわけで、韓国の“パダイヤギ事件”は他人事であり、違法なものを放置した韓国人の責任問題であり、日本人には無関係、何の責任も無い。したがって、この件から何一つ学ぶことはできないし、学ぶ気もないのである。
日本国内では大人のP、PSへの”のめり込み”の結果、車内放置により乳飲み子まで死んでいる。2017年にも発生し、新聞に掲載された。多くの日本人は“Pをするものは中毒者、自分とは無関係な愚か者“と思い込んではいないだろうか?
今日、国民の経済的階級化も急速に進んでいる。自分は低所得層とは無関係だという、根拠のない自負心。病気になり介護されるようになるまで気づかない、自分だけ良ければいいという高齢者=年金受給者の慢心。われわれ日本人は、バブル崩壊で
”エセ中流意識“
が崩壊したにも関わらず、まだ目が覚めていないのだろうか?
(*1)これらについては、以下に3つの参考書を示す。(他にも多数有)
A、若宮健氏著「なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか?」
取材を元に事件の詳細に触れており、韓国に倣うべしとし、一貫して“P廃止論”を唱えている。だが憶測、勘違いの部分も多い。
警察官僚とP業界の癒着を弾劾しているが、あくまでP業界を管轄しているのは警察である。業界の某会社役員に警察官僚OBが就いているからといって、それだけで天下りだ、癒着だ、贈賄だ、と決めつけるのはおかしい。利権をむさぼっていると主張するのは勝手だが、“坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”式の論法は乱暴すぎる。
第一、日本の警察も風適法に関わる違反や不法行為には非常に厳しい。筆者の住まいの近くにある大型店も“釘(1本)を違法に曲げた”というだけで数年前に年末までの3カ月間全グループ店舗が営業停止処分を受けた。
余談だが、こんなことでは株式上場はできない。営業停止ではその間の利益は完全に0であり、免許取り消しにでもなれば店は倒産の憂き目にあう。もっとも“オオタ事件”のような例外もあるが・・・。いづれにしてもこれでは株主が納得しないだろう。風適法の下にあって、営業に、警察の手入れとその判断次第という不安材料が付きまとう限り無理なのである。
話が逸れたが、日本では以前からPに関わる様々な偽造問題、“ゴト”に関わる事件、のめり込みの挙句にあらゆる犯罪が確かに発生してきた。ここ近年は、IR法成立を背景に、のめり込み(ギャンブル依存)に関しては、リカバリ・サポート・ネットワーク(RSN)を全日遊連が立ち上げ、全国からの相談にのっている。これについては以下に述べるPOKKA吉田氏の書で詳しく紹介されている。またインターネット上には自分ののめり込み度を判断する“のめり込み防止対策問題ツール”がある。こうしたケアまでも頭ごなしに批判するようでは、逆にその人物に問題ありというべきだろう。
韓国の政治がらみの問題は根が深く、計り知れないものがある。盧武鉉大統領は2009年、疑惑により追い詰められ自殺した。この事件の後、PCに残っていた同大統領の“遺書”が公開された。これは側近らが発表したものとは異なるところもあり、逆に捜査当局への国民の不信を招き、最終的に捜査は打ち切られた。
かくして韓国国民の半数以上は李明博大統領に謝罪を要求し、林采珍検察総長が辞任した。前大統領の疑惑は李明博政権による、予備選挙中の不動産取引疑惑や最低記録の支持率を回復するための煙幕であるとも言われている。現在(2017)、盧武鉉氏が歴代大統領の中で人気No.1であることはその人柄、人格の高さに起因すると思わざるを得ない。その国にはその国の事情がある。日本のメディアが主張するように一概にイッショクタにはできないのである。
B、佐藤仁氏「パチンコの経済学」
この書では章を割いている。執筆当時はまだ韓国国内が“メダルチギ問題”で揉めている最中であった。勘違いと思われる部分もあるが、釘と換金問題をクリアした韓国のゲームシステムに学ぶべしとし、その可能性に期待をかけている。また、「続・パチンコの経済学」(2010)では、法規制と客層の意識変化によるPとPSの客離れの結果、その顧客が低予算で可能な投機FXやネット系ギャンブルに流れているとしている。詳細なデータは不明。さらにカジノ解禁を前提に、暗い未来が待つP業界への予測的提言(2010年の時点)がなされている。
1. 釘調整の無い装置の開発 → 封入式遊技機=ECO遊技機
2. 客の射幸性(高低)への傾向による台開発の分化→4円と低貸し玉営業に分化。
台は4円の使いまわしだが。
3.
ライセンス制により射幸性(高低)によるホールの営業形態の分離
(射幸性高ならライセンス厳)
4.
8号営業(ゲームセンター)との連携
5.
D カジノとの共存
6. 公営ギャンブル場内のP台設置
また、ロジェ・カイヨワの遊びと人間の分析から説いた内容も面白いが、著者はP廃止論者ではない。楽観的共存または継続論者である。
C、POKKA吉田氏「石原慎太郎はなぜパチンコ業界を嫌うのか」(2011)
韓国問題についてのコラムがある。そこでは、“メダルチギの違法改造、汚職の問題が韓国国会で取り上げられ、人道的見地からそれらが撤去された“と主張する若宮氏の言に、苦言を呈している。若宮氏も大統領の甥が関係したことに言及しているが、他の箇所にも憶測とも思える誤りが多く存在するため、“P反対・廃止論”の立場を貫くなら正確な情報を元に反論せよ、と主張している。
またPが違法であるという司法判断が出ていない以上はPを違法と決めつける“P廃止論者”への攻撃も手厳しい。さらに、章を割いて封入式遊技機についてもその問題点と利点を消費税を含めた形で言及していて興味深い。
2011年時点での低貸し玉パチンコが勝ち負けを求める層と少ない投資で時間を消費する層に客が分化しつつあり、客層の嗜好分化を考慮した台開発を含む業界の対応が今後問題になるだろうと指摘している。これは現在のP客に正に当て嵌まる。
4円Pでは、新台入替の日に観察した結果であるが、かつてのように一日じっくり打つ者はほぼいなくなっている。朝並んだ客は昼には既にいない。連チャンしたらプラスの内に即辞めするからだ。出玉を呑まれたり、ハマると読んだら即終了。持ち玉の客以外は入れ替わっている。
1円Pはどうだろう? ある月に約1箇月間観察してみた。(P450台、PS180台、1円P180台)
昼までに65歳以上と思われる男女の老人で1円の“海のシマ”を中心にほぼ90%が埋まる。データを確認すると、5連、10連チャン以上、5000〜17000個の出玉の台が5〜10台捨てられている。(遊パチで17000個は稀)
15時頃から次第に減ってくる。
16〜17時には50%以下になる。そこでまだ粘っているのは、午前からきて、台移動しながら出たり呑まれたりで勝ち負けを繰り返している老人たちだ。少額投資で連チャンしたものは即撤収している。
17:30頃から若者と中年客が1円コーナーにやってくる。汚い作業服のまま座る人相の悪いヤツも2〜5人ほどいる。同じ顔である。必ずツルンデ、騒いでいる。3日ほど続けてくるが、結局1円も負けて来なくなる。
若者と中年客が座りだすと1円のシマは活況を呈しだす。老人とは投入する金の勢いが違うからだ。昼死んでいた台が狂ったように連チャンすると、即辞めて行く。勝ち負けこだわり組は、当然閉店まで粘る。
こうしてみると、明らかに老人だけでなく、夕方P客でも“連チャンしたら即辞め組”と“閉店近くまで粘る勝ち負けこだわり組”に分かれていることがわかる。
この著者は他の著者とは異なり現役でPを打っている。よってP廃止論者というわけではないが、現在のままでは問題があるとし、著書の最後で“換金を辞めるべきではないか?”と提言している。
確かに換金が警察、メーカー、店、客を巻き込んでエスカレートする原因となってきたのは事実だ。
しかし、約半世紀に渡り3点方式による換金可能なPが浸透してきたこの社会で、このシステムから換金を無くした場合、どのようなPやPSマシンが、また換金に代わるシステムが国民に受け入れられるのだろうか? 全く不明である。
かつてのアンケート調査でP客の回答に、“換金できるからPをする”というものが客のほとんどを占めていたという。もし換金できなくなったら、今の換金目的の若者、中年のP客は行かなくなるだろう。換金目的の老人も行かなくなり、時間つぶしが目的か、真に中毒の成人+老人だけが行くようになるのではないだろうか? ただし1円コーナーのみだ。4円客は数十万円の資金でできるFXやネットギャンブルに一層移行する可能性もある。
理由が何であれP客は激減する、これは致命的である。P店だけの問題ではない。その周辺の製造に関わる全企業が倒産の憂き目を見ることになる。代表的なものはP玉製造、台枠+役物系プラスチック製造、釘製造、アクリル板への釘打=NCマシン制御関連業、玉上げ供給等のシステムメンテナンス業などだ。
そのリスクを冒してまでP業界を改革するものが現われるのだろうか?
今のところ、だれにもその予測はできていない・・・
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